『 あのひと 』 -
18禁SM含 -
×黒澤和光 (総受parallel)
その人に会ったのは、オレが中学卒業してすぐにだった。
武装に入りたがってたツレが肩にタトゥ彫るんだって、あの人の仕事場についてった時だ。 ビルの何階だかの、部屋番号しかわかんねえような何の目印もない1室だった。 もちろんオレ達は、顔見ただけですぐに追い返された。‘18過ぎてからだ’って。 その時、いちど会ったきりだったけどオレはあの人の顔をおぼえた。 小さい町だし、交差点なんかでたまに見かけた。
鈴蘭入ってすぐ。
気にしてるバイク屋を通りかかったさいガレージ横に、素が何だかわかんねえくらいカスタムされた真っ黒なクルーザーが停まってた。それが今まで見たことないほどにすげえいい。 縁石にしゃがみこんでそれを見てると、店から人が喋りながら出てきた。 オレはすぐ、その場をはなれようとした。 じゃあ、「なあ、おい」と後ろから声がかかった。
振り返る。じゃ、あの人がメット持って立ってた。
「やっぱ。
顔の傷とバンダナでわかったよ。お前、ちょっと前にウチに来たヤツだろ、2人で?」バイクのキーを差し込みながら、オレを振り返る。
「あ、ああ。 そうすね」と、今、声をかけられて思い出したみたいな返事をした。
「バイクすきなの?」
「普通に」
「乗っけてやろうか?駅とかまででいーなら。」
「オレ、今からガッコすよ」
「もー昼じゃん。 鈴蘭か? 後輩じゃねーか、なら後ろ乗れよ」とメットをわたされた。
たぶん「ほら来いよ」て、口の動きでそう言われてるんだけど、エンジン音で聞こえやしない。オレはメットを頭にのせバイクのシートに跨った。 タンデムバーも取っ払ってある(もともとねえのか、)。どこ持ちゃーいーんだよ。 「つかまれ」て聞こえた気がして、走り出した。オレは腰に手をまわすしかなかった。
鈴蘭まで、5分とかからなかった。
走ってる間じゅう、風にあおられるあの人の襟首から香水のにおいがしてた。
校舎の裏、コンクリ壁の穴の前でバイクが停まる。
あの人はバイクからおりて、煙草に火をつけた。 「この穴よ、オレらん時にやったんだよ」とコンクリに人ひとりが、しゃがんで通れる程の穴をのぞきこんだ。「ここのセンセは、ほんと無頓着だよな。ずっとあの時のまんまだもんよ、」そう言ってオレを見上げて笑った。「オマエ、何年?」
「1年だけど」
「なんだよ まいったな、
名前は?」
「黒澤、」
「じゃなくて 下 した」
「 和光、」
「かずみつ、おまえさ彫もん刺れる気あんだったらまた来いよ。 そん時は話聞いてやっから。」
*
「かずみつ、おまえさ彫もん刺れる気あんだったらまた来いよ。 そん時は話きいてやっから。」 オレはそう言われたのをずっとおぼえてた。 そう言われた時は、そんな気なんてさらさら無かった。 それでも時折り、その言葉がよぎるようなことがあった。 そして刺青のある肩とすれ違うたび、それがどうしても気になるようになった。
1年戦争で、花木に伸されてオレに刺青をいれる理由ができた。
2度目、あの人の仕事場を訪れた。 ビルの横にはあの人の黒いクルーザーが停めてあった。
ドアフォンを押しても返事はない。 鉄のドアをノックしてドアノブをひねると鍵はかかってなかった。中から声はする。 だから「あの、」つってみたら、知らねえ男が怒鳴りながら壁を蹴飛ばし、入り口に立ってるオレを一瞥して叫んで出てった。
「出直したほうがいいすか?」声を大に言ってみた。
「べつにかまわんよ、誰?」部屋の奥から声がする。
「黒澤です」オレはそっちに行ってみた。
「 ああ、 かずみつ」
あの人は奥の明かりのついていない暗い部屋の、長椅子にふかく腰掛けていた。 「何? おまえ来たってことは彫る覚悟ついたのか? オレ、18歳以下と気にくわねえヤツには仕事しないんだけど、おまえ特別な。」
オレはあの人に‘とくべつ’って言われたことにじんときた。そしてその感覚はさっき出てった男に絡んだ。 「 …さっきの、そうやって断った結果なんですか?」言わなくていいことを訊いた。
「やー違う、違う。べつにあれは仕事とは関係ねーよ。
あんなにお客サン怒らしてたら、仕事やってけないっしょ。
なに?かずみつ気になる?」肘を膝に、顔の前で組んでいた指の向こうからオレをかいま見た。
オレはギクリとする。「いや、そういうんじゃなくて、」じゃあ、どういうんだよ。
「だな。いきなり深入りすんのもマズイでしょ、」とあの人はわらった。
オレは黙ったままでいた。
「で、彫るデザインとかは決まってんの?」
「それは 考えてないです」
クスッと口だけが笑う「そういうヤツって、勢いだけなのが多いんだよ。で、筋彫りだけで途中止めちゃう。」
「オレは違います」
「いいよ。
じゃあ さ、デザインからじっくり考えていきゃいいんじゃねえか。」とスチールラックからファイルを抜いてオレに手渡す。「近頃、若いのも和彫りっぽいの彫ってくれって、絵描いたの持って来んのもいんだよ。それが結構ーうまいのな。 でも、おまえはそんなのは似合わねーんじゃねーか。」 オレが座ってる椅子の背につく。 「刺れたい場所はあんの?」
「ああ、それなら肩つーか、この辺に」オレは左腕の上の辺をさした。
「じゃ、ワンポイント大になんのか。これから先、背中一面、彫りたいってんじゃねーんだろ?」
「 はいたぶん」 花木の顔が脳裏にちらついた。
「ワンポイントなら、こんなのが上腕にあるとしっくりくんじゃないか」 ファイルをめくり、その中から白黒のスケッチを1枚、セーターの上からオレの腕にあてた。「どうだろ。ちょっと腕、出してみな」
オレはセーターの裾から腕を抜いて、あの人に向けた。
「細いなー」そう言いながらスケッチを腕にのせる。「もう少し、小さめがいいのかな…」と顎鬚を、ぐいっと反った親指で撫で上げた。 オレはそのしぐさをじっと見てた。
「なに?」オレの顔も見ずにあの人はきいた。
「いや、べつに
このデザインでいいです。」
「 あのな、」ふう、とため息をつかれた。「おまえ自身の体のことなんだよ。焼き消さねー限りずっと皮膚に残んだよ。そのこと解って喋ってんのか、おまえは?」
「 …彫モン刺れるってことがオレのケジメなんっすよ」ちょっと語尾が荒れた。認めたくなねーが花木のヤツのせいだ。
「 かずみつは、見たまんまの思いつめるタイプだな。 相ー当、頭、軋んでんだろーな、」バンダナの上から頭を揺さぶられた。反射的によけようとはしたが、掴まって、バンダナが弛んだ。
チッ、と、舌打ちをしながらその手から逃れる。そして弛んだバンダナを結びなおす。
「人に触られんの苦手なら、針刺したとき、余計痛えぞ、体が強張ってるからさ」
「そんなもんは脅しにならんですよ」
「だな。頑なそうだもんよ、おまえ
で、ほんとにこのデザインでいくのか? まあ、オレはかずみつに合うとおもうけど」
「これでお願いします」 腕をセーターにもどした。
*
「××さんて何歳すか?」 筋彫りの時、あの人に訊いた。 仕事場に行くのは4度目になる。前の時は晩飯食わしてもらって、バイトみたいなことをやった。
「1発で当ててみな。じゃ、これ、半額にまけてやるよ。」 彫る場所が場所だけに、あの人の顔がオレのすぐ真横にある。 部屋にはノイズまじりの重い打ち込みが床を揺らす様、鳴り響いている。 オレ等は大声を出し合った。
「え?40はいってないっすよね」
「質問はなしだ。 おまえぐらいのガキがいたって いや、そこまでの歳じゃねーな。うん。」マスクのした、ひとり、うんうん納得している。
始終、肉を焼かれるようにオレは痛え。
部屋はマシン音をかき消すノイズがズゥンズン響いてた。
*
次の日。 駅のホームで真島たちに会った。 きっとオレを待ち伏せてたんだろう。真島はイライラと何度も唾をはいた。
真島のツレ2人は駅の便所の入り口を、立ち塞いでいる。
真島は、結束バンドでオレを馬のように個室に繋ぐ。そしてオレの体のなかにグイグイ分け入ってきた。「黒澤、あの男はなんだ、え、」下から穴を深くえぐり上げる。
う、ぐうぅ、っ、と、オレの咽からうめき声が洩れた。 (あの男?花木のことでも言ってんのかコイツ、)
「オマエのことだ。もう、ヤらせたんだろ。イッパツ幾らでヤらせてんだ?え?スベタ?」
(ああ、こいつ、あの人のこと言ってるのか。こないだ一緒に晩飯食ってんのでも見かけたんだろうな…。)
「こーやって濡らして尻揺するのかよ、え?」尻の肉を平手で思いきりしばき上げられる。「オレがこんだけかわいがってやってんのに、まだ足りねえのかよ、テメエはよ!」反対の尻も同じくやられて、大げさな音が便所に響いた。 痛くはない。あれに比べりゃ、こんなもんは痛みでもねえ。
立ちバックで、さんざんズリ上げ、中でイった真島はオレを便器に投げ捨てる。 両手を後ろ手に、首を繋がれたまま、オレは股をわられ、立ってるアレを真島の正面にさらす格好に便座についた。
尻に力を入れると、真島のザーメンが穴から便器の水にでろりと糸をひいて落ちていった。
靴底でオレは踏まれる。そして嬲られる。じゃりっとした感覚があって、靴底の溝が金玉を押し上げる。そのまま裏筋をグリグリ圧し付けられると、オレはたやすく射精する。
最後に、真島は必ずオレのチンポに唾を吐きかけた。
彫りもんはツブシだけ残して、進行が止まっている。 あの人は「この彫り賃いーからさ、仕事の合い間の都合でさ いいかな? もともと気に入ってたデザインだし、ここんとこよ、ボカシにしてみてーんだわ」と腕の、腫れのひいた筋の部分に触れた。まだヂンと痛え気がした。
「はい」
そんな訳で、オレはあの人の仕事場に出入りするようになった。
オレはそこにいても、べつにやることはなかった。弁当買ってくるとか、あの人のパシリっぽいことするしかなかった。 それでも入り浸った。 あの人もオレがボサっとソファなんかにいても気にしねーみたいだったし、オレも居心地がよかった。
夜は家の前までバイクで送ってくれた。 オレはあの人にしがみついて、バイクのケツに乗ってんのがたまらなく心地よかった。べつにこのまま家なんか帰んなくていーのによ、て、いつも思ってた。
「××さんて、仕事場と家ってベツなんすよね、」
「ここには手狭で住めねーし、駅の反対側に部屋借りてる。」
腕の彫りもんは真ん中の星形のツブシだけになった。
「刺青って儲かるんすね」
「今の流行り商売だよ。」
「××さんが ンな風に言うの、意外です」
「実際そうだろ。」
「さめてんすね。」
「ガキの頃は看板屋になろうと思ってたよ。中学の頃から、この職につきてーと思うようになったけどな。」
「へえ。」
「かずみつは?」
「まだ先のことなんで、」
「16だっけ? 7?」
「はい。」
「て? まーどっちでもいーけど。
はい終い!」 血を拭って、あの人は最後に背中をぽんとたたいた。
オレは腕を見下ろす。真っ黒な墨を取り囲むよう、皮膚が赤く熱を持って膨れ上がってた。「ありがとうございました。」( ‘これ彫り終わったし、もう、ここ来んのマズイすか、’ て訊いても、‘来んな’て言われないことは、だいたいわかってた。 ほんとはここに来たいとか関係なくて、…この人とヤりてえ。この人にヤられてえ、だ。 でもンなことは、まず、口にできねーだろ、。) オレは‘ありがとうございました’つったきり、シャツも着ないで、つっ立ってた。
「どーした?」
「いや、彫ってみるとあっけねえな、とおもって」
「落ち着いた頃、もっかい墨入れなおすとよりクッキリするけど。」
「ふうん、」
「あれ、そういうことじゃねえ?」
「 オレのモンダイです」
「なんだそれ、カンジ悪りい。言いたいことあったら言っとけよ。ここ来んの最後かもしれねーんだし。」
「 だから、オレまたここ来てもいーんですか、仕事のジャマじゃないっすか、て。」
「あ、そー言おうとしてたのか。」
「 …はい 」
「ここじゃなくて、ウチ来りゃいーじゃん。 じゃあ今からここ片して来る?」
「え、 」
「じゃー、さっさとモップがけしろ」
*
あの人の部屋は、仕事場の真っ黒な壁や天井、タイルの床とは違って、全部板張りだった。 広いワンルームの部屋にあるデカいベッドやソファも、革張りじゃなくて濃い色のフエルト布みてーなのだった。
部屋の隅に折り畳まれてる金属ゲージが目に付く。 「あれ、何か飼ってんすか?」
「 ああ。 前、ここいた人がウサギ飼っててさ。」 あの人は脱いだ革のブルゾンを壁にかけた。「かずみつ服は?」
「このままで。」
「何か飲む? おまえは今日、酒はだめだけど。」
「ここにいた人って男すか?オレ会ったことありますよね?」
「んー、男だけど、おまえは会ったことないだろ、」
「 2回目んとき オレ玄関ですれ違いました。その人、すげー怒かって仕事場出てきました。」
「だっけ? そうかも、」 グラスのアルコールに湯を注ぐ。
「そんときは‘客じゃねえ’って聞きました。」
「まあ、座れば。
確かに、客じゃーねえし。
立ってないで座ってくれよ」
あの人の座るソファの横に座る。「友達すか?」 話を切られねーってことは、オレは踏み込んでいいってことなんだろ?
「まー そーだったよ。」
「でもベッドはひとつしかねえ…」
「 尋問かよ?ったく、回りくどい。はっきり訊けよ、ゲイか、って。 まあ、そうなんだけどよ。」
オレはこれ、きいちまって、言わせちまって、この人に‘じゃあ、あんたとヤりてえ’て言うつもりなのか?
「なんか、眉間にしわ寄せて思いつめてる顔してんのな。顔に出すぎなんだよ、かずみつはよ。
でさ、話しかわるけど、まだ鈴蘭て1年戦争続いてんの?」 この人はカムアウトしたばっかなのに、それが何でもないかのように話を続けた。
「はい」
「おまえ、参加はしたけど、どっかで脱落したろ?
そういうヤツが毎年何人かは‘刺青いれてくれ’てうち来んだけどよ。
あ、オレ、18歳未満で彫ったのかずみつが最初よ。まーこれからもやんねーだろうけど。だって、コレ怖えーもん、」と手首を揃えて手錠の格好をした。 「で、ちなみに勝者は?」
「 花木九里虎って、ヨソもん」
「へんな名前。」
「1年の覇者で、鈴蘭の頂点っすよ」
はははは!「そりゃ、やってらんねーな。そんなのと同期じゃよ」
「はい…」
「おまえ、それに負けたから、これ彫ったんだろ。」
「 …関係ないっすよ」
「全部顔に出てんだよ」
「なあ、なんか映画とか見ねえ? こないだプロジェクターと、でっかいスクリーン買ってさ。まだ1回も使ってねえんだよ。」 壁のシェルフにオレを呼ぶ。 買ったばかりで値札の貼ったままのDVDも、そこに一緒に並んでた。
「ホラーとか、ゾンビとか、スプラッタばっかすね。」
「あーそうかもなー。 でも、ゲイポルノも何枚かはある」
「
…あのさ、
もしよ、
オレがヤられてるビデオあるつったら見てえ?」
「え?」あの人の顔が曇った。 「笑って流すとこだったのに、んなこと言われっと、よお、」
「あんなガッコ行ってりゃ、あってもおかしくねえと思わないんすか?」
「あ、あー。
もしかして誘ってる?」
「相手してくれんだったら、」
「オレ、ヤりだすとケッコウ酷いかもしんねーよ?」
「だいたいのことはできると思います」
「そりゃ、すごい。」 あの人は呆れた笑い顔になった。
*
誰かとキスをするは今がはじめてだ。
「その‘ぐりこ’とかってのにヤられたとか?」
そんな名前は今聞きたくねえ。
キス、するまえから半立ちみてーだってのに、もうジーンズの中でチンポが張り詰めて痛え。 そこを撫でられる。
「先、言っとくとオレ、無理やりじゃねーとたたねーんだ。
おまえがさ、仕事場居ついてるとき、どんだけヤってやろうかって考えたか知ってる?おまえ、切り刻まれてんだよ、オレの頭んなかで。」 壁に頭から投げつけられた。
あの人がオレの首に跨って、フェラだ。顔を左右からパンパン叩かれる。咥えたのをこぼすと、鼻をつままれ、咽の奥にサオも玉も突っ込まれた。それで、ようやくあの人はたちはじめた。 馬乗りにオレのシャツを破って、それで手首を縛って引き倒す。「すげーなおまえ。立ちっぱなし。ホントは今日なんかセックスやんないほうがいーんだぞ」 そこを踵で踏まれて、腰がひけた。「たぶん、おまえは何でもできるんじゃなくて、マゾなんだろーな」
ジーンズの尻の縫い目をナイフで裂かれる。パンツを横に捻くって、穴に冷たい何かが挿入された。それが体内でくねりだす。
口にはあの人の性器をほおばる。金玉を片方ずつちゅぱちゅぱ吸って、舐めあげる。首根っこを押さえつけられ、裏筋の生え根一帯を顔中で愛撫させられて、自分のツバまみれになった。
尻の方が、もう、ガマンができない。
「も、イきて、え」つったら、ジーンズを膝まで下げられて、板張りの床に放置された。
「いいよ、イけば」あの人はソファに座ってオレを見下ろしてる。 煙草に手を伸ばして火をつけた。「それだけじゃ、イけね?」オレに近寄って、勃起したチンポのすぐ真上で、トン、と煙草の灰を落とす。「この筋さ、ピアスつけよーか、今から」
あの人は一旦立ち上がって、テーブルの引き出しからニードルと消毒液を出してきた。チンポ全体を消毒する。そのひやっとした刺激にオレはぶるるるっと1度目の射精をした。
ニードルの封を取る。 その針先がオレのチンポを這う、そして時折り、ちくりと肉に刺さる。 おれはすぐに持ち直した。
目の前にちらちら見えるあの人の立ったチンポがしゃぶりたくてたまらない。そればっかを目で追った。
いきなりチンポから脳天に激痛が走った。オレは叫んで、自分のものを確かめた。カリ首の裏筋のところにニードルが貫通していた。 痛みに金縛りになる。
縮こまって、呻くオレの顔を掴まえ、あの人がキスをする。「かずみつ、かわいい」ずっと深くオレを舐め取る。「すげえスケベな体だな。おまえにはまりそう、全部オレ好みに調整したくなったよ」 あの人は、キスをしたまま手をそろりと下へ、ニードルに触れた。触られただけで、オレは強張る。その針をあの人はゆっくり途中まで抜いた。オレはあの人の口の中叫び声をあげた。「しー。しー。ガマンしてキスだろ?」 言われるがまま、唇をがたがた震わせ、夢中であの人の口に吸い付いた。
針が根元まで差し込まれる。オレのチンポは萎えきって、そこだけ引きちぎられたような痛みに占められた。
「抜いて、」
「無理だろ
おまえ、このまんま、ファックされんだもん。オレがイくまで、このまんま」
オレはテーブルの上に転がされ、尻の具合を確認された。
「ホント穴、グダグダだな。すげえよ、かずみつ」
あの人がゆっくりオレの中に入ってきて、穴全体を占める。「とろとろだなかずみつ」
ゆるっと腰を使う。オレのチンポが腹の上で揺れる。もう、マヒしてて、何が何かわかんねえ。
「おまえの穴でイけそうだ」
あの人はオレに射精した。 その後、ニードルをピアスにつけかえてくれた。
ひとつのベッドで眠って(オレは痛みであんまり寝れなかった)、起きてまたセックスをした。チンポが勃起するたびに痛みが強くぶり返してきて、あの人は‘やめとく’なんて訊ーてくれたけど、オレはむしろこのままで、ヤられたかった。
*
ガッコの便所で金次が声をかけてきた。
そっけなく‘最近お前がつるんでる年上のヤツ。評判悪いぞ’と言ったきり、すっと便所から出てった。
たぶん、そんなことは誰に言われなくても薄々肌で感じてた。 あの人はツラもいいし、人当たりも悪くねえ。何着てても様んなるし、ケチでもねえ。もてるだろうし、若いうちからヤりチンだったのなんか、雰囲気だけでわかるよ。 だからってなんだ。そんなの関係ねーだろーが。ほっといてくれ! そう思いながら手を洗ってた。
便所のドアが大げさな音をたて、誰かが入ってきた。鏡で背後を確かめる。 鏡越しに、花木九里虎と目があった。
「ここん男子校にオナゴの居るち、キシャンね、」
花木はわからないことを口走っている。 1年戦争でのオレのことなんてまるで覚えていない口ぶりだ。
突っ掛かろうと振り向きざま、オレは襟首を掴まれ、そのまま個室に投げ込まれた。 クソッ!どいつもこいつもアナ扱いしやがって! 咄嗟に壁に手をつき、花木の腹を蹴り返してやった。
その踝を掴まれる。「こら、お転婆スケバンったい。」ピュィッと口笛をふく。 「イッパツ験めさして。」
「野郎のアスコも善かち、聞くけんね」
花木はオレの頭を水洗タンクの上に押さえつけ、ズボンを引き下ろした。
「そんなり入っと?」 なんとなく、穴のまわりをもそもそと探る。「ちーとムリ気かいね」そう言って体勢をかえた。 花木が便座に座って、向き合った状態で、その腿に座り込むかたちになった。
「あれ?きしゃんどこぞで会ーたや?」あらためて顔を見た花木がきいてくる。
「知らねーよ」
「尻ポケットのナイフば抜いとーとけん」 ぶらんとオレのナイフを見せ、それを高く投げ上げ、個室から捨ててしまった。「鑑別所いきたーなかろーもん」
「テメーに関係ねーだろーが」
「やって、ワシんオナゴにするち、今、決めたもん!」
「あほうじゃねーか、誰がテメーの女になんかなんだよ」
「れ、もう、ダンナの居っと? 悪かこつの言わん。ワシんしときんしゃい。」 花木が両腕を捕って、首筋に顔を埋めてきた。 「わ!ほんまに!オナゴんにおいのする!希少種ばい!」
ボタンをぷつぷつを外して胸をさらした。「細かぁね。アバラの浮いとぉ」 花木の視線が下に移ってゆく。 「へえ、こんピアスがダンナへの操立てね?」 ピンと、バーベルをはじき上げた。
「さっさとヤりゃいーじゃねーか。このガッコでテメーに敵うのなんか、いねーんだからよ。好き勝手やれよ。」
「止めて欲しか?」
あ゛?
「時間かけよち、今決めた。」
はあ?
花木が顔をぐいっと近づけてきて、口をぎゅっと押し付けるだけのキスをした。
*
オレと真島の関係も、
あの人とオレとの関係も、
ぷつりと切れたわけじゃーねえ。
ただそこに花木が割って入って、その幅を利かしてるってだけの日常だ。
:: のらりくらりと、題ありき、だったのです。 『アイツ』に続きます。 20091114-18 ::